今回は少し専門的な構造の話しです。
先日、代々木体育館のシンポジウムでの構造の川口先生のお話が
興味深かったので紹介します。
代々体育館は大屋根を支えるメインのケーブル以外の屋根面も吊り構造と
思っていたのですが、屋根面は反極点のある梁構造なのだそうです。
ですから吊り屋根なのですが構造材にはモーメントが発生しています。
通常、大空間を支える屋根の構造材は引っ張り圧縮という、モーメントが
発生しない構造の面又は構造材の軸の方向に働く力で荷重に耐えるように
計画しあれます。
そうしないと材が大きくなってしまい不合理だからです。
さて代々体育館の場合には屋根の形が面内の引っ張りだけで構造が解ける
曲面に乗らないため材にモーメントが発生していて、構造的には有る意味不合理です。
ですが同時代のサーリネンのホッケー場やオットーの競技場のようにきれいに
テンションの面に乗せてが作られた合理的な形よりもはるかに美しい。
ここに丹下健三という建築家の造形に対する特徴があると思ったのです。
合理的ということだけではなく、美しいもののみ機能的であるという
丹下健三氏の言葉を思い出したのですがいかがでしょうか。