岡本太郎というと僕らの世代は、大阪万博の太陽の塔をすぐに思い出す。
お祭り広場に峻立する姿に異様さを感じたのを今でも覚えている。
うまくあることを拒否し続けた作家の情念に、ずっと近寄りがたい異質なものを感じて、
岡本作品にはふれてこなかった。
記念館は青山にあった岡本太郎のアトリエをそのまま展示空間としたものである。
美術館にありがちな乾いた空気感がなく、落ち着いて居心地がよく、展示物の数もほどほどで
ゆっくり時間が過ごせるから、僕はこの手の記念館が大好きである。
そんな記念館を訪れて、岡本太郎に対する思いが少し変わった。
庭に置かれた彫刻が庭木に埋もれ、岡本太郎亡き後、そこで時を重ねることに
充足しているように感じられたからである。縄文的な岡本作品は、もともとお祭り広場や
街中のような乾いた場所に置かれるのではなく、自然の中でゆっくり時を重ねる
ためのものなのではないかと、ユーモラスな彫刻を見ながら思った。
とくに大振りなアーカンサスの葉や、羊歯と彫刻がぴったりとあっていた。
作品と植物の葉の形、色、花等がシンクロした芸術の庭ができたら楽しいだろうと、
思いをめぐらせた暖かな春の1日だった。